じょーたのデジタル野生生活

自分の進路を模索しながら大自然と触れ合う坊主大学生のゆるめの野生生活。

60日目〜あいさつから全てが始まる〜

その日は朝4時50分に目が覚めた。

 

5時に設定していたiPhoneのアラームを切り

 

前の夜に和歌山で知り合った方に貸していただいた釣り竿を手に

 

1人静かに漁港まで原付を飛ばした。

 

 

 

その日は前日の夜から雨が降り続いていた。

 

恐ろしく寒い。

 

手がかじかんで感覚がなかった。

 

自分の指がニッスイお魚のソーセージかクワムラハムのウインナーかどっちかわからなかった。

 

 

 

日の出前の朝マズメから始めて

 

気がつけば朝の9時を過ぎていた。

 

やっぱりワーム代わりにジグヘッドにフェットチーネグミをつけてもダメか…

 

そんなことを呟きながら迫る便意に背中を押されてというかお尻を押され帰宅することに。

 

 

 

下宿先に到着すると、アパートの階段を小学生と思しき少年が駆け下りてきた。

 

すると僕を見つけるやいなや間髪を入れずに大きな声で挨拶をしてきた。

 

「こんにちは!!」

 

小学生に挨拶される歳になったな〜と思いつつ、気持ちが良かった。

 

ボウズで帰ってきた坊主には冬の朝の味噌汁のように暖かい挨拶だった。

 

それと同時に

 

「俺はちゃんと出会った人に挨拶できてるかな。」

 

そんなことを思った。

 

 

 

朝ごはんを食べて全ての記憶を失うと

 

こりずにまた釣りに出かけた。

 

次は近くの釣り具店でサビキセットを購入。

 

今晩のおかずを釣りに行く。

 

そう意気込んで再び朝のバトルフィールドへ。

 

 

 

原付の法定速度30km/hから一度もずれることなく10分ほどで着いた。

 

原付を釣りポイントの近くにとめて歩いて行こうとした時、犬の散歩をしていた60代くらいの男性を見つけた。

 

少し離れていたが今朝のことを思い出して、思い切って挨拶をしてみた。

 

「こんっちわーー!!」

 

一瞬ビクついたのが離れていてもわかった。

 

ごめんなさい…

 

そう思いながら近づいていく。

 

「なんや兄ちゃんみかん狩りけえ!?」

 

みかんの木ひとつない漁港でじっちゃんの声が響き渡る。

 

「そうなんですよ!愛媛から収穫のお手伝いに来ました!!」

 

しばらく一緒に散歩をしながら援農者としてお手伝いに来ていること、今日は休みで釣りに来たことなどを話した。

 

「そんならこの山の向こうの漁港がええわ!」

 

じっちゃんも釣りが趣味らしくよく釣れるポイントを教えてくれた。

 

離れていても挨拶してよかったなと思った。

 

犬が帰りたがり始めた為、じっちゃんとはそこでお別れをし教えていただいたポイントへ移動することに。

 

 

 

新しいポイントにつくと探すまでもなく魚の影が大量に見えた。

 

「ごちそうさまです。」

 

この恵みを育ててくれた母なる海に合掌そして一礼。

 

さあ後は釣るだけ。

 

さあ後は釣るだ…

 

サビキのやり方わかんね。

 

 

 

知識ゼロだったことを思い出した。

 

とりあえずネットで調べるか…と落胆していた時だった。

 

前方から釣り人が2人歩いて来た。

 

その2人も船の間を見ては何やら話していた。

 

どうやら自分と同じように魚を見ているらしい。

 

これまた今朝のことを思い出して坊主っぽい挨拶をした。

 

「こんっちわーー!!」

 

30代かそれより若い感じの2人組だった。

 

「一緒にやりますか??」

 

どうやら初心者というのが絵面的に一瞬でバレたらしい…

 

即答でお願いした。

 

そして、全てを教えていただいた。

 

結果から言うと、教えていただいた知識、そして運が良かったこともありとんでもなく釣れた。

 

アジが120〜130匹釣れた。

 

そのうちアジ95匹とカサゴ1匹をいただいた。

 

 

 

後から聞くと、全国各地の釣り場を回られているらしく

 

和歌山にはみかんの収穫のお手伝いをする傍ら釣りを楽しまれているのだとか。

 

そして、なんか坊主が挨拶してきたということで誘って見たのだとか。

 

 

 

この日の出会いは全ては朝の少年の挨拶から始まった。

 

特に話すつもりはなくてもいいのだと思う。

 

高校時代の友人がこんなことを言っていた。

 

「挨拶をされて嫌な気持ちになる人はいない」

 

確かに、挨拶をしない人に対して怒る人や、全然知らない人に挨拶をされてびっくりする人はいても、怒る人はそうそういないだろう。

 

ならばしない手はない。

 

小さなことかもしれないが、どこに出会いが転がっているかわからない。

 

全ては挨拶からはじまる。

 

そんなことを感じた日だった。

 

 

 

その夜は夜中の1時半まで96匹の恵み達をさばききった…